# 地球の裏側まで(全文テキスト版) > 日本の地面から真下に掘り進み、地球の中心を通って、反対側のブラジル・パラナ州パト・ブランコの地上に出るまでの12,742kmを、縦スクロールでたどるインタラクティブな図解。深さごとに、そこにある生き物・地下鉄・化石・鉱山・地層・鉱物・地震・核など約140項目と、温度・圧力・重力を示す。 出典: https://chikyu-no-uragawa.com/ (運営:プニョル、本編の最終更新:2026年10月18日) ## 日本の地面から地球の中心へ 深さは、出発点(日本のどこかの地面)からの深さ。 ### 地殻(ちかく) 地球のいちばん外側のうすい皮。地球をリンゴにたとえると、皮くらいの厚さしかない。 - **ミミズ**(10cm): 土を食べてフンとして出し、土をふかふかに耕す。進化論のダーウィンは、約40年かけてミミズを研究した。 - **土の中の微生物**(22cm): スプーン1杯(約1g)の土に、数億〜数十億の微生物がいる。落ち葉を分解して、植物の栄養に変えている。 - **セミの幼虫**(35cm): 木の根に口を刺して汁を吸いながら、地中で数年すごす。地上で成虫として生きるのは、最後の数週間だけ。 - **モグラ**(50cm): 東日本の平野にすむアズマモグラは、都会でも公園や緑地の土にトンネルを掘ってくらす。前足はシャベルのよう。 - **ガス管・水道管**(約1m): 道路の下の浅いところには、ガス管や水道管、電線、通信ケーブルがびっしり。道路工事で掘り返されるのはこの層。 - **アリの巣**(1.4m): たくさんの部屋を通路でつないだ地下の都市。種類によっては、深さ数mにもなる。 - **木の根**(2m): 木の根の多くは、深さ1〜2mまでの土に広がる。根は水だけでなく、酸素も必要だから。 - **海だった土地**(3m): 日本の大きな街の多くは、昔の海や湿地を埋め立てた土地の上にある。たとえば東京駅の丸の内側は、江戸時代のはじめまで「日比谷入江」という海だった。 - **下水道**(5m): たとえば東京23区の下水道管をすべてつなぐと約16,000km。東京とシドニーを往復するくらいの長さになる。 - **地下鉄**(8m): 1927年に開業した東京の銀座線は「東洋初の地下鉄」。道路のすぐ下の浅いところを走る。後からできた路線ほど、深いところを通るようになった。 - **沖積層**(12m): 約1万年前から川や海が運んだ、やわらかい泥や砂の地層。縄文時代に海が内陸まで入りこんでいたころの貝がらが出てくる。 - **ナウマンゾウの化石**(22m): 1976年、東京・日本橋浜町の地下約22mで、地下鉄の工事中に見つかった。約12〜15万年前、日本の平野にはゾウが歩いていた。 - **ビルを支える層**(28m): かたい砂利の層(支持層)。高層ビルは、こうした硬い層まで杭を打ちこんで建物を支えている。 - **大深度地下**(40m): 地下40mより深いところなどは「大深度地下」。国が認めた公共事業なら、原則として地上の土地の持ち主に補償なしで使える(2001年施行の法律)。リニア中央新幹線もここを通る計画。 - **六本木駅(大江戸線)**(42.3m): 東京の大江戸線・六本木駅の1番線ホームは、地下42.3m。東京でいちばん深い地下鉄の駅。 - **東京スカイツリーの杭**(約50m): 高さ634mのタワーは、地下約50mまで届く壁のような杭(ナックル・ウォール)で地面に踏んばっている。 - **首都圏外郭放水路**(約50m): 埼玉県春日部市の地下約50mを流れる、世界最大級の地下放水路。巨大な柱が並ぶ水槽は「地下神殿」とも呼ばれる。 - **土合駅**(約70m): 群馬県・JR上越線の下りホームは、駅舎との高低差が約70m。改札まで486段の階段を上る「日本一のモグラ駅」。 - **世界一深い木の根**(約120m): 南アフリカ・エコー洞窟の野生のイチジクは、根が地下約120mまで届いていたとされる(ギネス世界記録)。 - **黒湯**(〜300m): 東京の銭湯で人気の黒いお湯。多くは深さ300mより浅い井戸からくむ。黒い色は、大昔の植物が分解してできた成分(フミン酸)によるもの。 - 目安:東京タワーをさかさまにした深さ(333m) - 目安:東京スカイツリーをさかさまにした深さ(634m) - **天然ガスとヨウ素**(200〜1,500m): 千葉県を中心とする「南関東ガス田」では、地下200〜1,500mほどの地層の水に天然ガスがとけている。この水にはヨウ素も多く、日本は世界のヨウ素の約3分の1を生産している。 - **悪魔の線虫**(約1,300m): 南アフリカの金鉱山の地下約1.3kmで見つかった、長さ0.5mmの線虫(2011年)。学名は、ファウスト伝説の悪魔メフィストにちなむ。 - **大深度の温泉**(1,000〜1,500m): 地下は深いほど温かい。東京では、深さ1,000mで約25℃、1,500mで約40℃のお湯がわく。火山がなくても温泉が出るのはこのため。 - **世界一深い洞窟**(2,224m): ジョージアのクルベラ洞窟は、深さ約2,224m。人が自分の足で降りられる、もっとも深い自然の穴。 - **基盤岩**(約2〜3km): 日本の平野の地下では、やわらかい地層の下から、もっと古くてかたい「基盤岩」が現れる。東京ではおよそ2〜3kmの深さ。 - **勇敢な旅人**(2,800m): 南アフリカの金鉱山の地下2.8kmの水で、たった1種類だけでくらす細菌が見つかった。岩の中のウランなどが出す放射線で水が分解されてできる物質を、エネルギーにしている。学名の「アウダクスウィアトル」は「勇敢な旅人」という意味で、小説『地底旅行』の一節から。 - 目安:富士山をさかさまにした深さ(3,776m) - **世界一深い鉱山**(約4,000m): 南アフリカのムポネン金鉱山は、地表から約4km。岩の温度は約66℃あり、氷を送りこんで坑道を冷やしながら金を掘っている。 - **生命の限界温度**(約4〜5km): 生き物が増えられる最高温度の記録は122℃(JAMSTEC、2008年)。日本の地下では、深さ4〜5kmほどでこの温度に近づく。 - **地下の生命圏**(〜約5km): 陸の地下約5kmまで微生物が見つかっている。地下の生き物をすべて集めると、炭素の重さで人類全体の約250〜400倍になると推定されている(2018年)。 - **地球深部探査船「ちきゅう」**(7,906m): 2024年、宮城県沖で船の上から7,906m下まで掘り、科学目的の掘削でギネス世界記録に。水深6,897.5mの海底から、さらに980m掘った。 - 目安:エベレストをさかさまにした深さ(8,849m) - 目安:ジェット旅客機が飛ぶ高さと同じ(約10,000m) - **コラ超深度掘削坑**(12,262m): 人類が掘ったもっとも深い穴。旧ソ連が1970年から約20年かけて掘ったが、底は予想より熱い約180℃に達し、ここで止まった。穴の直径はわずか23cm。地下約6kmでは、小さなプランクトンの化石も見つかった。 - ※ ここから先は、人類がまだ誰も、何も届いたことのない世界。 穴に飛びこんだら、ここまで約49秒。 - **内陸の地震**(5〜20km): 日本の内陸で起きる地震の多くは、深さ5〜20kmほどの地殻の中で起きる。 - **フィリピン海プレート**(約20〜30km): 日本列島の下には、南からフィリピン海プレートが沈みこんでいる。たとえば東京の真下では、深さ20〜30kmほどでこのプレートにぶつかる。首都直下地震が心配されている場所の一つ。 ### マントル(まんとる) 地殻の下から深さ2,900kmまで続く、熱い岩の層。地球の体積の8割以上をしめる。 - **モホ面**(約35km): 地殻とマントルの境目。1909年、クロアチアの地震学者モホロビチッチが、地震の波の速さが急に変わる深さとして見つけた。 - **かんらん岩**(35km〜): マントルの岩の大部分は「かんらん岩」。主な鉱物のかんらん石は、宝石のペリドットと同じもの。 - **太平洋プレート**(約70〜100km): 東から沈みこんできた太平洋プレートは、東京の真下なら深さ約70〜100km。東京の地下には3枚のプレートが重なっている。世界でもめずらしい場所。 - 目安:宇宙の入り口(高度100km)と同じ距離(100km) - **マグマのふるさと**(約100km): 日本列島の火山の地下では、沈みこむプレートから深さ100km前後で水がしぼり出される。水が加わるとマントルの岩はとけやすくなり、マグマが生まれる。 - **冷たいプレート**(約100km): 沈みこんだプレートは、海の底で長い時間冷やされてきたので、周りのマントルより何百℃も冷たい。日本の地下100kmあたりは、マントルの中なのに意外と「冷たい」。 - **ダイヤモンドの生まれる圧力**(150〜200km): 深さ150〜200kmは、約5万〜6万気圧の世界。古い大陸の地下では、この圧力で炭素がダイヤモンドになる。地上のダイヤは、ここから特別な火山の噴火で一気に運ばれてきたもの。 - **ゆっくり流れる岩**(約100〜400km): プレートの下のマントルは固体だが、長い時間をかけると水あめのようにゆっくり流れる。プレートはこの上をすべるように動いている。 - ※ 地球の半径の5%まで来た。 中心までは、まだ6,000km以上ある。 - 目安:国際宇宙ステーションが飛ぶ高さと同じ。東京〜大阪の距離を真下に進んだ(約400km) - **鉱物が変身する**(410km): すさまじい圧力で、かんらん石の原子の並び方が変わり、もっとぎゅっとつまった鉱物(ワズレアイト)になる。地震の波の速さもここで変わる。 - **青い鉱物と地下の海**(520km): さらに深いと、青い鉱物「リングウッダイト」に。結晶の中に水をたくわえられる。2014年、ブラジルで見つかったダイヤモンドの中から、水をふくむリングウッダイトが見つかった。ここには海に匹敵する量の水があるかもしれない。 ### 下部マントル(かぶまんとる) ここから深さ2,900kmまでは下部マントル。地球でいちばん大きな層。 - **深発地震**(682km): 2015年5月30日、小笠原諸島西方沖の深さ約680kmでM8.1の地震が起き、全47都道府県で震度1以上を観測した。日本の下に沈んだ太平洋プレートの中で起きた。 - ※ 地震が観測されるのは、深さ約700kmまで。 これより深い場所の地震は、ほとんど見つかっていない。 - 目安:東京〜札幌と同じ距離(833km) - **ブリッジマナイト**(660〜2,700km): 下部マントルの主役で、地球でいちばん多い鉱物。なのに天然の結晶が見つかって名前がついたのは2014年。オーストラリアに落ちた隕石の中からだった。 - **地球のCTスキャン**(地球全体): ここまで来て見た人はいない。地球の中の様子は、世界中で記録した地震の波の伝わり方を組み合わせる「地震波トモグラフィー」で、CTスキャンのように調べている。 - 目安:東京〜那覇と同じ距離(1,559km) - **マントル対流**(マントル全体): マントルはかたい岩なのに、何億年という時間をかけて対流している。速さは1年に数cm、爪がのびるくらい。この流れがプレートを動かし、地震や火山のもとになる。 - 目安:東京〜北京と同じ距離(2,099km) - **プレートの墓場**(〜2,900km): 沈みこんだプレートの一部は、何千万年〜何億年もかけてマントルの底まで沈み、積み重なっていると考えられている。 - **ポストペロフスカイト**(約2,600〜2,900km): マントルのいちばん底の層(D″層)。2004年、日本の研究チーム(廣瀬敬さんら)が、ここで鉱物がさらに別の形に変わることを実験で突きとめた。 - 目安:東京〜香港と同じ距離(2,885km) ### 外核(がいかく) 岩の世界が終わり、とけた金属の海へ。ここから深さ5,150kmまでは、ドロドロの液体の鉄。 - **核とマントルの境界**(2,891km): 地球の中で最大の境界。上は岩、下は液体の金属。密度は一気に2倍近くになる。1914年、地震学者グーテンベルクがこの深さを突きとめた。重力がいちばん強いのもここで、地表の約1.09倍。 - ※ 穴に飛びこんだら、ここまで約12分43秒。 速さは秒速7.6km。人工衛星なみの速さ。 - **液体の鉄の海**(2,891〜5,150km): 外核は、とけた鉄とニッケルの海。温度は4,000℃前後から5,000℃以上。それでもさらさらと流れる液体だ。 - 目安:月の直径と同じ距離(3,474km) - **地震の波の「影」**(3,800km): 地震の揺れのうちS波は、液体の中を伝わらない。地球の反対側にS波が届かない「影」ができることから、外核は液体だとわかった。 - **鉄のうず**(4,300km): 外核の鉄は、1年に10kmほどのゆっくりした速さで流れ、地球の自転にふりまわされてうずを巻いている。 - 目安:東京〜バンコクと同じ距離(4,609km) ### 内核(ないかく) 液体の外核の中に浮かぶ、固い鉄の球。 - **レーマン不連続面**(5,150km): 1936年、デンマークの地震学者インゲ・レーマンが、外核の中にもうひとつ固い核があることを見つけた。 - 目安:東京〜シンガポールと同じ距離(5,320km) - **固体の鉄の球**(5,150〜6,371km): 内核は半径約1,220km、月の7割ほどの大きさの鉄のかたまり。太陽の表面と同じくらい熱いのに、すさまじい圧力のせいで固体のまま。 - **回る内核**(5,900km): 内核は、地球のほかの部分と少しちがう速さで回っているらしい。2023年には「回転のずれが2009年ごろに止まり、逆向きに転じたかも」という研究も出た。まだ謎だらけ。 - 目安:東京〜ハワイ(ホノルル)と同じ距離(6,199km) ### 地球の中心(ちきゅうのちゅうしん) 地表から6,371km。ここでは重力がゼロ。体はどこにも引っぱられず、ふわりと浮く。 ## 地球の中心をこえて、反対側の地表へ 深さは「反対側の地表(ブラジル・パラナ州パト・ブランコ)まであと何km」で表す。 - **中心のデータ**(中心): 圧力は約360万気圧、温度は推定5,000〜6,000℃。穴に飛びこんでいたら、ここまで約19分。通過する速さは秒速約9.9km(時速約3万5,700km)。 - ※ ここで上と下が入れかわる。 中心を過ぎると、重力は進む向きと逆に引っぱる。ここからは反対側の地表に向かって「上って」いく。画面の下が、新しい「上」だ。 - **向きのそろった結晶**(地表まで 6,050km): 地震の波は、内核を南北方向に通るほうが、東西方向より数%速い。鉄の結晶の向きがそろっているためと考えられている。 - **成長する内核**(地表まで 5,650km): 外核の鉄が少しずつ固まり、内核は今も大きくなっている。内核ができたのは5億〜10億年前ごろという説が有力になってきた。 - 目安:東京〜モスクワと同じ距離を掘った(7,483km) ### 外核(がいかく(反対側)) ふたたび液体の鉄の海。ここで、地球の磁場が生まれている。 - **ダイナモ**(地表まで 4,800km): 外核の液体の鉄がうず巻いて流れると電流が生まれ、その電流が地球の磁場をつくる。方位磁針が北を指すのは、ここのおかげ。 - **見えないバリア**(地表まで 4,100km): 地球の磁場は、太陽から吹きつける粒子(太陽風)から地上を守るバリア。オーロラは、そのすき間から入りこんだ粒子が大気を光らせる現象。 - 目安:東京〜ロサンゼルスと同じ距離を掘った(8,810km) - **磁場の逆転とチバニアン**(地表まで 3,550km): 地球の磁場は、これまで何度もN極とS極が入れかわってきた。最後の逆転は約77万年前。その証拠が残る千葉県市原市の地層から、約77万4千〜12万9千年前は「チバニアン」と名づけられた(2020年)。 - 目安:東京〜ロンドンと同じ距離を掘った(9,562km) - **南大西洋異常帯**(地表まで 3,000km): これから出ていく南米の上空は、地球の磁場がとくに弱い「南大西洋異常帯」の中。人工衛星がここを通ると、機器がトラブルを起こしやすい。 ### マントル(まんとる(反対側)) ふたたび岩の世界へ。ここから約2,900km、熱い岩の中を上っていく。 - **マントルの底の巨大な塊**(地表まで 2,620km): マントルの底には、大陸ほどの大きさの巨大な岩のかたまりが2つある。1つはアフリカの下、もう1つは太平洋の下。正体はまだわかっていない。 - **核の誕生**(地表まで 2,350km): 約46億年前、生まれたばかりの地球の表面はどろどろのマグマの海だった。重い鉄が中心へ沈んで核になり、軽い岩が浮いてマントルになった。 - **プルーム**(地表まで 2,000km): マントルの底のほうから、熱い岩が煙のように上ってくる流れ。約1億3千万年前、プルームの頭が南米とアフリカの境目の下に届き、地表に大量の溶岩をあふれさせたと考えられている。その溶岩が、これから通る玄武岩の大地だ。 - 目安:東京〜ニューヨークと同じ距離を掘った(10,847km) - **地球の熱の源**(地表まで 1,600km): 地球の内部から外へ流れ出す熱の約半分は、岩の中のウランやトリウムがこわれるときに出る熱。2011年、岐阜県の神岡鉱山の地下にある観測装置「カムランド」が、地球の中から来るニュートリノをとらえて明らかにした。 - **ほとんど岩の星**(地表まで 1,200km): マントルは地球の体積の8割以上。地球はほとんど「熱い岩のかたまり」で、海も大陸も、その表面のうすい皮にすぎない。 - ※ 反対側の地表まで、あと1,000km。 掘った距離は11,742km。 - **下部マントルから来たダイヤ**(地表まで 780km): 2021年、ボツワナで採れたダイヤモンドの中から、深さ660km以上の下部マントルでできた鉱物が、天然で初めて見つかった(デイブマオアイトと命名)。 - **ふたたびリングウッダイト**(地表まで 520km): 深さ660kmを過ぎて、マントル遷移層へ。青いリングウッダイト、ワズレアイト、かんらん石と、来たときと逆の順に鉱物が変わっていく。 - 目安:あと400km。国際宇宙ステーションが飛ぶ高さと同じ(残り400km) - **プルームの通り道**(地表まで 300km): パラナ盆地の地下(ここから北へ数百km)には、地震の波がまわりより遅く伝わる円柱のような部分が、深さ数百kmまで続いている。1億3千万年前の大噴火を起こしたプルームの「通り道の跡」と考えられている(1995年発表)。 - **反対側の沈みこみ帯**(地表まで 220km): ここから西へ約2,000km、南米プレートの西のふちでは、太平洋のナスカプレートが沈みこみ、アンデス山脈と火山が生まれている。日本列島と同じしくみ。 - **大陸の根っこ**(約150km): 大陸の下のプレートは、海の下よりずっと厚い。南米大陸の下では、深さ150kmほどまで冷たくてかたい「根っこ」が続いていると考えられている。 - **南米プレート**(地表まで 100km): 南米大陸をのせた南米プレートは、大西洋の真ん中の海嶺から押されるように、1年に数cmずつ西へ動いている。 - **沈まない大陸**(地表まで 60km): 大陸の岩は軽いので、海のプレートのようにはマントルへ沈みこまない。だから大陸には40億年近く前の岩も残っている。海の底の岩は、いちばん古くても約2億年。 ### 大陸の地殻(たいりくのちかく) 反対側は南米大陸。地殻の厚さは約40kmもあり、日本列島の下の地殻よりどっしりと厚い。 - **静かな大地**(地表まで 25km): 日本の地下とは大ちがい。このあたりはプレートの境目から遠く、大きな地震はほとんど起きない。 - **古い大陸の岩**(約5〜40km): 地殻の大部分は、何億年〜何十億年も前にできた古い岩(花こう岩や片麻岩)。大陸の土台として、ずっとここにある。 - 目安:地表まで、あとコラ超深度掘削坑1本分(残り12,262m) - 目安:地表まで、あとエベレスト1つ分(残り8,849m) - **盆地の下の土台**(約4〜40km): パラナ盆地の地層の下には、大陸の土台(基盤岩)が続いている。盆地は、この土台が何億年もかけてゆっくり沈み、そのくぼみに地層がたまってできた。 ### パラナ盆地(ぱらなぼんち) 南米の大地にできた、日本の4倍ほどもある巨大なくぼ地。4億年以上かけて、海の泥、氷河の石、砂漠の砂、溶岩が積み重なった。 - **4億年前の海**(約4km(推定)): 約4億年前(デボン紀)、ここは浅い海の底だった。パラナ州のポンタ・グロッサでは、この地層から三葉虫やシャミセンガイの化石が見つかる。 - 目安:地表まで、あと富士山1つ分(残り3,776m) - **氷河の時代**(約3〜4km(推定)): 約3億年前、南米・アフリカ・南極・インドなどはひとつの大陸(ゴンドワナ)で、このあたりは分厚い氷河におおわれていた。氷河が運んだ石が、泥の中にちらばって残っている。 - **石炭になった森**(約2.7km(推定)): 氷河がとけたあと、舌のような形の葉をもつ植物「グロッソプテリス」の森が広がった。その森が石炭になった。同じ植物の化石は、南極やインドからも見つかる。 - **燃える石**(約2.5km(推定)): 黒い頁岩(イラチ層)には、油をふくむものがある。パラナ州のサン・マテウス・ド・スルでは、地表近くに出ているこの岩を掘り、熱して油やガスを取り出している。 - **メソサウルス**(約2.5km(推定)): 約2億8千万年前の水辺にいた、細長い口の小さな爬虫類。同じ化石がアフリカ南部でも見つかることは、ウェゲナーが「大陸はもともとつながっていた」と考えた証拠のひとつになった。 - **ひとつだった大陸**(地表まで 1,900m): 1億年あまり前まで、南米とアフリカはひとつながりの大陸だった。両大陸の海岸線がパズルのように合うことから、ウェゲナーは1912年に「大陸移動説」を唱えた。 - **石油を探したら温泉**(約1〜2km): パラナ盆地では、石油を探して掘った井戸から温泉がわいた町がいくつもある。サンタカタリーナ州のピラトゥバでは、1964年に約2,200mの井戸からお湯が出て、いまは温泉の町になっている。 - **砂漠だった大地**(約1km(推定)): 約1億4千万年前、ここは見わたすかぎりの砂漠だった。砂丘の砂が固まった砂岩には恐竜などの足あとが残り、サンパウロ州のアララクアラでは、この石を使った歩道から約1,000個も見つかった。 - **グアラニー帯水層**(約1km(推定)): 砂岩の粒のすき間には、大量の地下水がたまっている。ブラジル・アルゼンチン・パラグアイ・ウルグアイの4か国にまたがる、世界最大級の地下水のたまり場。 ### 溶岩の大地(ようがんのだいち) 約1億3千万年前、何十万年にもわたって溶岩があふれ出し、何十枚も重なって固まった玄武岩の大地。このあたりでは厚さが数百mから1,000m近くある。 - **地球史上最大級の噴火**(地表まで 650m): あふれた溶岩は、もとは230万km³以上と見積もられている。日本の面積の2倍をこえる広さを、厚い溶岩がおおいつくした。 - 目安:地表まで、あと東京スカイツリー1本分(残り634m) - **イグアスの滝**(地表まで 400m): ここから西へ約200kmのイグアスの滝は、この玄武岩の層が段々になったところを流れ落ちている。落差は最大で約80m。 - 目安:地表まで、あと東京タワー1本分(残り333m) - **アメジストの晶洞**(地表まで 250m): 溶岩が固まるときにできた気泡のすき間に、長い時間をかけて紫水晶(アメジスト)の結晶が育った。南のリオグランデ・ド・スル州は、世界有数の産地。 - **岩の割れ目の水**(地表まで 120m): 玄武岩の割れ目にしみこんだ地下水を、井戸でくみ上げて飲み水や畑に使っている。 - **玄武岩の柱**(地表まで 40m): 厚い溶岩がゆっくり冷えて縮むと、六角形の柱のような割れ目(柱状節理)ができる。 - **岩が土に変わる**(約1〜10m): 地表に近い玄武岩は、雨と暑さで長い年月をかけてくだけ、赤い土に変わっていく。このあたりの赤い土は、厚さ数mになることも多い。 - **ハキリアリの巣**(〜約8m): 切りとった葉っぱで「キノコ畑」を育てるアリ。巣は地下数mまで広がり、セメントを流しこんで調べた巣は深さ約8mに達していた。 - **パラナマツの根**(地表まで 2.5m): パラナ州のシンボルの木、パラナマツ(アラウカリア)。冬になると、大きな松ぼっくりからとれる実(ピニャン)をゆでて食べる。いまは絶滅が心配されている。 - **町の地下**(約1〜2m): パト・ブランコの道路の下にも、水道管や電線、通信ケーブルが通っている。地球の反対側でも、町の地下は日本とちょっと似ている。 - **アナホリフクロウ**(地表まで 90cm): 地面に穴を掘って巣にする、小さなフクロウ。ブラジルでは畑や町の空き地でよく見かける。 - **大豆の根の「肥料工場」**(地表まで 45cm): 大豆の根にできる粒(根粒)にすむ細菌が、空気中の窒素を栄養に変える。ブラジルでは、この細菌のおかげで大豆畑に窒素肥料をまかなくてすむ。 - **赤い土**(地表まで 20cm): 玄武岩がくだけてできた、鉄分の多い赤い土(テラ・ロッシャ)。よく肥えていて、パラナ州はブラジルで2番目の大豆の産地。 ## 到着:ブラジル・パラナ州パト・ブランコ とうちゃく #### 地球の反対側に 出た! ブラジル・パラナ州 パト・ブランコ ・ 南緯26.23° 西経52.67° 真下に12,742km。出てきたのは、ブラジル南部パラナ州の町パト・ブランコ。人口約9万2千人(2022年)、標高約760mの高原の町で、まわりには畑とパラナマツの林が広がる。冬には霜がおり、雪が降ることもある。 **掘った距離** 12,742km ほぼ地球の直径 **穴に飛びこむと** 約38分 空気抵抗なしの場合。中心で秒速9.9km **新幹線(時速300km)で** 約42時間 **歩くと(時速4km)** 約133日 ##### 「日本の裏側はブラジル」はほんと? 日本の真裏のほとんどは、じつはブラジル沖の大西洋。陸地に出られるのは、沖縄や奄美などの島から掘ったときだけ。このパト・ブランコの真裏は、沖縄・慶良間諸島のあたりにあたる。 ##### 地面の下と、海の向こう ブラジルには約200万人の日系人が暮らし、日本の外で最大の日系社会がある。1908年、最初の移民船・笠戸丸でブラジルに渡った781人のうち、325人は沖縄の人だった。 ## よくある質問 ### 日本の真裏(地球の裏側)はどこ? 北海道・本州・四国・九州の真裏は、ブラジルやウルグアイの沖の南大西洋で、陸地ではない。真下に掘って陸に出られるのは、奄美・沖縄・大東諸島など南の島から掘ったとき(ブラジル南部)と、宮古・八重山諸島から掘ったとき(パラグアイ)。このページの到着地パト・ブランコの真裏は、沖縄の慶良間諸島のあたり。(くわしく:https://chikyu-no-uragawa.com/articles/japan-antipode/) ### 地球の裏側まで掘ると何km? 地球の直径とほぼ同じ、約12,742km(地球の平均半径6,371km×2)。地球の中心は、地面から約6,371kmの深さにある。(くわしく:https://chikyu-no-uragawa.com/articles/earth-structure/) ### 地球をつらぬく穴に飛びこんだら、反対側まで何分かかる? 空気抵抗や熱を考えない計算では約38分。地球の中心まで約19分で着き、中心を秒速約9.9kmで通りすぎる。地球の密度がどこでも同じだと仮定した昔からの計算では約42分だが、実際の地球は中心ほど密度が高いので、少し早く着く。(くわしく:https://chikyu-no-uragawa.com/articles/fall-through-earth/) ### 地球の中心の温度・圧力・重力は? 温度は推定5,000〜6,000℃で、太陽の表面と同じくらい。圧力は約360万気圧。重力は、まわりのすべての方向から同じように引っぱられるため、ゼロになる。(くわしく:https://chikyu-no-uragawa.com/articles/earth-center/) ### 人類はどこまで深く掘れた? 旧ソ連のコラ超深度掘削坑の12,262mが、真下への深さの世界記録。それでも地球の半径の約0.2%で、地球の中心までは遠くおよばない。(くわしく:https://chikyu-no-uragawa.com/articles/deepest-hole/) ### 誰も行ったことがないのに、地球の中のことがどうしてわかる? 地震の揺れ(地震波)が地球の中を伝わる速さや道すじを世界中で記録し、CTスキャンのように内部を調べている。さらに、地球の中心と同じ超高圧・超高温を実験室で再現して、そこで岩や鉄がどうなるかを確かめている。(くわしく:https://chikyu-no-uragawa.com/articles/earth-center/) ## 読みもの ### 日本の真裏はどこ?「地球の裏側はブラジル」は半分だけほんとう URL: https://chikyu-no-uragawa.com/articles/japan-antipode/ **答え** 北海道・本州・四国・九州の真裏は、ブラジルとウルグアイの沖に広がる南大西洋。真下に掘って陸地に出られるのは、奄美・沖縄・大東諸島(ブラジル南部)や、宮古・八重山諸島(パラグアイ)など、日本の南の島から掘ったときだけだ。 #### 「真裏」の求め方 地球の中心をはさんで真反対にある地点を「対蹠点(たいせきてん)」という。緯度と経度がわかれば、だれでも計算できる。 - **緯度**:数字はそのままで、北と南を入れかえる(北緯35度 → 南緯35度) - **経度**:180から引いて、東と西を入れかえる(東経140度 → 西経40度) たとえば東京駅(北緯35.68度、東経139.77度)の真裏は、南緯35.68度、西経40.23度。地図で見ると、ブラジル南部の海岸から1,000km以上も離れた、南大西洋のまっただ中だ。 #### 主な場所の真裏 日本各地の代表的な地点について真裏の座標を計算し、そこが陸か海かを地図データ(OpenStreetMap)で確かめた。 | 掘りはじめる場所 | 真裏の座標 | 真裏にあるもの | | --- | --- | --- | | 札幌 | 南緯43.06° 西経38.65° | 南大西洋 | | 仙台 | 南緯38.27° 西経39.13° | 南大西洋 | | 東京(東京駅) | 南緯35.68° 西経40.23° | 南大西洋 | | 名古屋 | 南緯35.17° 西経43.12° | 南大西洋 | | 大阪 | 南緯34.70° 西経44.50° | 南大西洋 | | 広島 | 南緯34.39° 西経47.54° | 南大西洋 | | 福岡 | 南緯33.59° 西経49.58° | 南大西洋(ブラジル南部の沖) | | 鹿児島 | 南緯31.60° 西経49.44° | 南大西洋(ブラジル南部の沖) | | 奄美大島(名瀬) | 南緯28.38° 西経50.51° | ブラジル・サンタカタリーナ州 | | 沖縄本島(那覇) | 南緯26.21° 西経52.32° | ブラジル・パラナ州 | | 南大東島 | 南緯25.85° 西経48.75° | ブラジル・パラナ州(海辺の町グアラトゥバ) | | 宮古島 | 南緯24.81° 西経54.72° | パラグアイ(アルト・パラナ県) | | 石垣島 | 南緯24.34° 西経55.84° | パラグアイ(カニンデジュ県) | | 与那国島 | 南緯24.47° 西経57.00° | パラグアイ(サン・ペドロ県) | | 沖ノ鳥島(日本の最南端) | 南緯20.43° 西経43.92° | ブラジル・ミナスジェライス州 | 地点は市役所や駅などの代表点。同じ都市や島でも、場所によって真裏は少しずつずれる。 #### 陸に出られるのは、日本の南の島から 真裏が陸になるのは、北緯20〜29度あたりにある日本の南の島々だ。その真裏は南緯20〜29度、西経43〜57度あたりになり、ちょうど南米大陸の南東部に重なる。 - **奄美群島・沖縄本島・慶良間諸島・久米島・大東諸島** → ブラジル南部のパラナ州やサンタカタリーナ州。高原に畑やパラナマツの林が広がる地域だ。 - **宮古諸島・八重山諸島**(宮古島、石垣島、西表島、与那国島、波照間島など) → パラグアイ東部。 - **沖ノ鳥島** → ブラジル南東部のミナスジェライス州。 いっぽう、九州の南の端(鹿児島)から掘っても、真裏はブラジルの海岸から100km以上沖の海になる。北海道・本州・四国・九州のどこから掘っても、出てくるのは海の中だ。 #### それでも「日本の裏側はブラジル」と言われるわけ 北海道・本州・四国・九州の真裏は海だが、そこからいちばん近い陸地はブラジル南部の海岸だ。日本の南の島々の真裏は、実際にブラジルの大地にある。地球儀で見れば、ブラジルは「ほぼ真裏」の国と言っていい。 そのうえ、ブラジルには約200万人の日系人が暮らし、日本の外では最大の日系社会がある。遠いけれど身近な国として、ブラジルが「地球の裏側」の代名詞になったのは自然なことだろう。 #### このサイトの到着地、パト・ブランコ 本編「地球の裏側まで」で最後にたどり着くのは、ブラジル・パラナ州の町パト・ブランコ(南緯26.23度、西経52.67度)。人口約9万2千人(2022年)、標高約760mの高原の町だ。その真裏は、沖縄県の慶良間諸島のあたりにあたる。 本編の日本側では、東京などの実例を使って「地面の下に何があるか」を紹介している。けれど東京から本当に真下へ掘ると、出口は大西洋の海の中だ。そこで本編では、出発点を「日本のどこかの地面」とし、反対側は人が暮らす陸地の町、パト・ブランコに出るようにしている。 #### 自分のいる場所の真裏を調べるには - 地図アプリで今いる場所を長押しして、緯度と経度を調べる(例:35.6812, 139.7671)。 - 緯度の符号を逆にする(35.6812 → -35.6812)。 - 経度から180を引く(139.7671 − 180 = -40.2329)。 - できた座標(-35.6812, -40.2329)を地図アプリで検索する。 西経の場所(南北アメリカなど)から調べるときは、経度に180を足せばいい。 参考: [地球の裏側はブラジルだと思ってません? 対蹠地MAPでチェック(ギズモード・ジャパン)](https://www.gizmodo.jp/article/post_665412/) / [パト・ブランコの対蹠地(Antipode Finder)](https://antipode-finder.com/antipode-of/pato-branco-brazil/) / [Nominatim(OpenStreetMap の地名検索)](https://nominatim.openstreetmap.org/) / [パト・ブランコ(IBGE:ブラジル地理統計院)](https://www.ibge.gov.br/cidades-e-estados/pr/pato-branco.html) / [ブラジルの日系社会(JICA)](https://www.jica.go.jp/volunteer/outline/publication/pamphlet/crossroad/202203/pickup_03_14/) ### 地球をつらぬく穴に飛びこんだら、反対側まで何分かかる? URL: https://chikyu-no-uragawa.com/articles/fall-through-earth/ **答え** 空気抵抗や熱を考えない理想の条件なら、約38分で反対側の地表に着く。地球の中心までは約19分。中心を通りすぎるときがいちばん速く、秒速約9.9km(時速約3万5,700km)になる。 #### 落ちていく速さと時間 穴の中には空気がなく、壁にもぶつからないとする。地球の内部では深さによって重力の強さが変わるので、地震の観測からつくられた地球のモデル(PREM)の重力を使って、このサイトで計算した。 | 深さ | 着くまでの時間 | そのときの速さ | | --- | --- | --- | | 12.3km(人類が掘ったいちばん深い穴の底) | 約50秒 | 秒速約0.5km | | 35km(地殻の底、モホ面) | 約1分24秒 | 秒速約0.8km | | 660km(下部マントルの入り口) | 約6分 | 秒速約3.6km | | 2,891km(核とマントルの境界) | 約12分44秒 | 秒速約7.6km | | 5,150km(内核の入り口) | 約17分 | 秒速約9.6km | | 6,371km(地球の中心) | 約19分 | 秒速約9.9km | | 12,742km(反対側の地表) | 約38分 | ほぼ0 | 中心を過ぎると、重力は進む向きと逆に引っぱるので、だんだん遅くなる。行きと同じだけ時間をかけて減速し、反対側の地表でちょうど止まる。そこで誰かにつかまえてもらえなければ、また落ちはじめ、約38分後に日本に戻ってくる。 #### 昔の答えは「42分」だった この問題は物理の教科書の定番で、昔から「約42分」と答えられてきた。これは、地球の密度がどこでも同じだと仮定したときの答えだ。 ところが実際の地球は、中心にいくほど重い。岩でできたマントルの下には、ずっと密度の高い鉄の核がある。そのため、地面から深さ2,891kmの核の表面までは、重力が弱まるどころか少しずつ強くなり、核の表面では地表の約1.09倍になる。最初から強く引っぱられ続けるぶん速く落ちるので、着くまでの時間は42分より短くなる。 2015年、物理学者のアレクサンダー・クロッツさんは、地震の観測から得られた地球内部の密度を使ってこの問題を計算し直し、答えを「約38分」と発表した(報道では38分11秒)。このサイトの計算でも、ほぼ同じ約38分になる。 おもしろいことに、「重力が地表とずっと同じ強さ」と仮定した簡単な計算のほうが、密度を均一とした計算より本当の答えに近い。重力が9.8m/s²のまま変わらないとすると、中心まで約19分、反対側の地表まで約38分になる。 #### まっすぐな穴なら、どこへ行っても同じ時間? 中心を通らない、斜めのまっすぐな穴でも、同じように「落ちるだけ」で反対の出口まで行ける。これは「重力トンネル」と呼ばれる。地球の密度が均一なら、穴の長さに関係なく、どの2点を結んでも所要時間は同じ約42分になる。東京から大阪でも、東京からブラジルでも同じ時間、という不思議な結果だ。 実際の地球で計算すると、そうはならない。短いトンネルなら約42分、地球の中心を通る長いトンネルほど短くなり、直径を通ると約38分になる。 #### 本当に飛びこんだら、どうなる? 38分というのは、あくまで理想の条件での話だ。実際には、いくつもの問題がある。 - **空気があると遅くなる**:空気の中を落ちる人は、スカイダイビングと同じで、時速200kmほどから速くならない。中心にたどり着くまでに1日以上かかり、反対側の地表までは届かずに、中心のあたりで止まってしまう。 - **とても熱い**:地下は深いほど熱い。マントルは千数百℃以上、地球の中心は推定5,000〜6,000℃もある。 - **すさまじい圧力**:中心の圧力は約360万気圧。どんな穴も押しつぶされてしまう。 - **壁にぶつかる**:地球は自転しているので、まっすぐ落ちたつもりでも、少しずつ横にずれて穴の壁にぶつかる。北極と南極を結ぶ穴でないかぎり、この問題は避けられない。 人類がこれまでに掘ったいちばん深い穴でも、深さは12,262m。地球の半径の約0.2%にすぎない。地球をつらぬく旅は、いまのところ想像の中でしかできない。 参考: [How Long Would It Take to Fall Through the Earth?(Live Science)](https://www.livescience.com/50312-how-long-to-fall-through-earth.html) / [A. Klotz, The Gravity Tunnel in a Non-Uniform Earth(American Journal of Physics 2015 の論文の原稿, arXiv)](https://arxiv.org/abs/1308.1342) / [Dziewonski & Anderson (1981) Preliminary reference Earth model(PREM)](https://doi.org/10.1016/0031-9201(81)90046-7) ### 地球の中心は何℃? 温度・圧力・重力と、誰も行けない場所の調べ方 URL: https://chikyu-no-uragawa.com/articles/earth-center/ **答え** 地球の中心は、地表から約6,371kmの深さ。温度は推定5,000〜6,000℃で、太陽の表面と同じくらい熱い。圧力は約360万気圧で、重力はゼロ。そこには、鉄とニッケルでできた固体の球(内核)がある。 #### 地球の中心のデータ | 項目 | 値 | くらべると | | --- | --- | --- | | 深さ | 約6,371km | 東京からハワイ(ホノルル)までの距離(約6,200km)より少し長い | | 温度 | 推定5,000〜6,000℃ | 太陽の表面(約5,500℃)と同じくらい | | 圧力 | 約360万気圧 | 1cm²(指先ほど)に約3,700トン、ジャンボジェット機およそ9機分の重さがかかる | | 重力 | 0 | どの方向にも同じように引っぱられて、つりあう | | 密度 | 約13g/cm³ | 水の約13倍。地表の岩の約5倍 | | 物質 | 鉄とニッケルの合金(固体) | まわりの外核は、とけた液体の鉄 | 圧力・重力・密度は、地震の観測からつくられた地球のモデル(PREM)による値。温度は推定値で、研究によって幅がある。 #### 中心では重力がゼロになる 地表では、地球全体が足もとの方向にあるので、真下に引っぱられる。ところが地球の中心では、上下左右のどちらを向いても、同じだけの地球がある。あらゆる方向から同じ強さで引っぱられて打ち消しあい、重力はゼロになる。地球の中心に立てたなら、体はどこにも引っぱられず、ふわりと浮く。 意外なことに、重力がいちばん強いのは地表ではない。重い鉄の核の表面(深さ約2,891km)で、地表の約1.09倍になる。 #### 太陽の表面ほど熱いのに、なぜ固体なのか 中心の鉄は、地上なら一瞬でとけて蒸発する温度にある。それでも固体でいられるのは、圧力が高すぎるからだ。物質は、強く押しつけられるほど原子が動きにくくなり、とけにくくなる。地球の中心のような約360万気圧の世界では、鉄がとける温度は地上の約1,500℃よりずっと高くなり、5,000〜6,000℃でも固体のままでいられる。 そのひとつ外側の外核(深さ2,891〜5,150km)は、圧力が少し低いため、鉄がとけて液体になっている。この液体の鉄がうず巻いて流れることで電流が生まれ、地球の磁場がつくられている。 #### 誰も行けない場所のことが、なぜわかるのか ##### 1. 地震の波でCTスキャンする 大きな地震の揺れ(地震波)は、地球の内部を通りぬけて、反対側まで伝わる。その伝わる速さや道すじは、通りぬけた場所の物質によって変わる。世界中の地震計の記録を組み合わせると、病院のCTスキャンのように地球の中を調べられる。 - 1914年、地震学者グーテンベルクが、深さ約2,900kmに核の表面があることを突きとめた。 - 地震の揺れのうち、S波(横波)は液体の中を伝わらない。地球の反対側にS波が届かない「影」ができることから、外核が液体だとわかった。 - 1936年、デンマークの地震学者インゲ・レーマンが、液体の外核の中に、もうひとつ固い核(内核)があることを見つけた。 ##### 2. 地球の中心を実験室でつくる 2つのダイヤモンドの先で小さな試料をはさんで押しつぶし(ダイヤモンドアンビルセル)、レーザーで熱すると、地球の深部と同じ超高圧・超高温をつくれる。そのとき試料に強いX線を当てると、原子の並び方がわかる。 2010年、東京工業大学(現・東京科学大学)の舘野繁彦さん、廣瀬敬さんらは、兵庫県の大型放射光施設SPring-8で、377ギガパスカル(約370万気圧)、5,700K(約5,400℃)という地球の中心に匹敵する条件をつくり、そこでの鉄の結晶の形を確かめた。 2013年には、フランスの研究チームが、内核と外核の境界(約330ギガパスカル)で鉄がとける温度を約6,000℃(誤差±500℃)と見積もった。それまで考えられていたより約1,000℃高い値だった。 ##### 3. そのほかの手がかり - **地球の重さ**:地球全体の平均密度は約5.5g/cm³で、地表の岩(約2.7〜3g/cm³)よりずっと重い。中心に重い物質が集まっていると考えると説明がつく。 - **ニュートリノ**:2011年、岐阜県の神岡鉱山の地下にある観測装置「カムランド」が、地球の中から来るニュートリノをとらえ、地球の内部から出る熱の約半分が、岩の中のウランやトリウムがこわれるときの熱だと明らかにした。 #### まだわかっていないこと 地球の中心は、今も謎だらけだ。内核は、地球のほかの部分と少しちがう速さで回っているらしい。2023年には、その回転のずれが2009年ごろに止まり、逆向きに転じたかもしれないという研究も発表された。内核がいつ生まれたのか、鉄とニッケル以外にどんな元素がまざっているのかも、まだ決着がついていない。 参考: [The Earth's Centre is 1000 Degrees Hotter than Previously Thought(ESRF, 2013)](https://www.esrf.fr/news/general/Earth-Center-Hotter) / [Iron's structure at Earth's core(Physics Today, 2010)](https://physicstoday.aip.org/news/irons-structure-at-earths-core) / [ポストペロフスカイトと内核(東京科学大学・廣瀬敬さん)](https://www.titech.ac.jp/public-relations/research/stories/hirose) / [Dziewonski & Anderson (1981) Preliminary reference Earth model(PREM)](https://doi.org/10.1016/0031-9201(81)90046-7) / [内核の回転(ScienceAlert)](https://www.sciencealert.com/earths-inner-core-may-right-now-be-in-the-process-of-changing-direction) / [カムランドと地球の熱(Physics World)](https://physicsworld.com/a/radioactive-decay-accounts-for-half-of-earths-heat/) ### 人類が掘ったいちばん深い穴は? コラ超深度掘削坑の12,262mと、地球深部探査船「ちきゅう」 URL: https://chikyu-no-uragawa.com/articles/deepest-hole/ **答え** 真下への深さで世界一の穴は、ロシア北西部のコラ半島にある「コラ超深度掘削坑」の12,262m(1989年)。旧ソ連が科学調査のために掘った穴で、直径はわずか23cm。それでも地球の半径(6,371km)の約0.2%にすぎない。 #### コラ超深度掘削坑 旧ソ連は1970年、地球の地殻がどうなっているかを直接調べるため、北極圏のコラ半島で穴を掘りはじめた。約20年かけて1989年に12,262mに到達し、人類が掘ったもっとも深い穴になった。 - **穴の太さ**:直径約23cm。人が入れる穴ではなく、細い管を通して掘る「ボーリング」の穴だ。 - **熱い底**:深くなるほど温度は上がり、底は予想より熱い約180℃に達した。それ以上掘り進めるのは難しくなり、資金不足もあって、1990年代に掘削は終わった。 - **岩の中の化石**:地下約6kmの岩から、小さなプランクトンの化石が見つかった。 地球を直径1mのボールにたとえると、コラの穴の深さは約1mm。人類が掘ったいちばん深い穴でも、地球の表面をほんの少しひっかいただけだ。 #### 「長さ」ならもっと長い穴もある 石油や天然ガスの井戸には、地下で向きを変えて横に長く掘り進めるものがある。たとえばカタールのアル・シャヒーン油田の井戸(2008年)は、長さ12,289mとコラより長いが、地表からの深さは約1,387mしかない。真下への深さでは、いまもコラが世界一だ。 #### 海の上から掘る「ちきゅう」 日本の地球深部探査船「ちきゅう」は、海の上から海底を掘る船だ。2024年、宮城県沖で、船の上から7,906m下まで掘りとどき、科学目的の掘削でギネス世界記録に認定された。水深6,897.5mの海底から、さらに980mを掘っている。海の下の地殻はうすいので、海から掘るほうが、マントルに近づきやすい。 #### 人が行ける深さ、生き物がいる深さ | もの | 深さ | ひとこと | | --- | --- | --- | | 世界一深い洞窟(ジョージアのクルベラ洞窟) | 約2,224m | 人が自分の足で降りられる、もっとも深い自然の穴。近くのベリョーフキナ洞窟とは測量の誤差の範囲で、順位が入れかわることがある | | 世界一深い鉱山(南アフリカのムポネン金鉱山) | 約4km | 岩の温度は約66℃。氷を送りこんで坑道を冷やしながら金を掘っている | | 悪魔の線虫(ハリケファロブス・メフィスト) | 約1.3km | 南アフリカの金鉱山の地下で見つかった、長さ0.5mmの線虫(2011年) | | 勇敢な旅人(デスルフォルディス・アウダクスウィアトル) | 約2.8km | 同じく金鉱山の地下水で、たった1種類だけでくらす細菌 | | 陸の地下の微生物 | 約5kmまで | 地下の生き物をすべて集めると、炭素の重さで人類全体の約250〜400倍と推定されている | #### なぜ、もっと深く掘れないのか いちばんの壁は熱だ。地下は深くなるほど熱くなり、コラでは12kmで約180℃に達した。日本の地下では、深さ4〜5kmほどで、生き物が増えられる限界とされる約120℃に近づく。 さらに深い地殻の底(深さ約35km)では温度は数百℃、圧力は1万気圧に近い。地球の中心(深さ6,371km)は推定5,000〜6,000℃、約360万気圧の世界だ。いまの技術では、地殻の底まで掘ることさえできていない。 人類がまだ誰も、何も届いたことのない場所は、地球のほとんどすべてだ。その中に何があるのかは、地震の波や実験から少しずつ明らかになってきている。 参考: [Kola Superdeep Borehole(Wikipedia 英語版)](https://en.wikipedia.org/wiki/Kola_Superdeep_Borehole) / [「ちきゅう」のギネス世界記録(秋田魁新報)](https://www.sakigake.jp/news/article/20250924CO0128/) / [ムポネン金鉱山(Wikipedia 英語版)](https://en.wikipedia.org/wiki/Mponeng_Gold_Mine) / [世界の深い洞窟(Wikipedia 英語版)](https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_deepest_caves) / [悪魔の線虫(Live Science)](https://www.livescience.com/14390-deepest-worms-discovered.html) / [Desulforudis audaxviator(Wikipedia 英語版)](https://en.wikipedia.org/wiki/Desulforudis_audaxviator) / [地下の生命圏(Deep Carbon Observatory, Phys.org)](https://phys.org/news/2018-12-life-deep-earth-totals-billion.html) ### 地球の内部構造をわかりやすく:地殻・マントル・外核・内核の深さと温度 URL: https://chikyu-no-uragawa.com/articles/earth-structure/ **答え** 地球は外側から、**地殻**(深さ数km〜数十km)、**マントル**(〜2,891km)、**外核**(〜5,150km)、**内核**(〜6,371km)の4つの層でできている。地殻とマントルは岩、外核はとけた液体の鉄、内核は固体の鉄だ。 #### 4つの層の一覧 | 層 | 深さ | 状態と物質 | 温度(目安) | | --- | --- | --- | --- | | 地殻 | 地表〜大陸で約30〜60km、海の下で約5〜10km | 固体の岩。大陸は花こう岩などの軽い岩、海の底は玄武岩 | 地表〜数百℃ | | マントル | 地殻の下〜約2,891km | 固体の岩(かんらん岩など)。長い時間をかけるとゆっくり流れる | 上部で千数百℃、底で約3,500〜4,000℃(推定) | | 外核 | 約2,891〜5,150km | 液体。とけた鉄とニッケル | 約4,000〜5,000℃以上(推定) | | 内核 | 約5,150〜6,371km(中心) | 固体。鉄とニッケル | 約5,000〜6,000℃(推定) | 深さの区切りは地球のモデル PREM による。温度は推定値で、研究によって幅がある。 #### ゆで卵にたとえると 地球の構造は、よくゆで卵にたとえられる。うすい殻が地殻、白身がマントル、黄身が核だ。地殻は本当にうすく、地球の半径6,371kmのうち、厚いところでも1%ほどしかない。 体積でくらべると、核の半径(約3,480km)から計算して、核は地球全体の約16%、マントルは8割以上をしめる。地球は「ほとんど熱い岩のかたまり」で、海も大陸も、その表面のうすい皮にすぎない。 #### 地殻:わたしたちが立っている、うすい皮 地殻は、大陸の下で厚さ約30〜60km、海の下では約5〜10kmしかない。日本列島の下では、地殻とマントルの境目(モホ面)はおよそ35kmの深さにある。人類が掘ったいちばん深い穴(12,262m)でも、地殻の底には届いていない。 #### マントル:ゆっくり流れる、熱い岩 マントルは地球の体積の8割以上をしめる、いちばん大きな層だ。かたい岩なのに、何億年という長い時間をかけて、1年に数cmという速さで対流している。この流れがプレートを動かし、地震や火山のもとになる。 - **プレート**:地殻と、そのすぐ下のマントルの冷たくかたい部分をあわせた板。海の下では厚さ100kmほど、古い大陸の下では150kmをこえる。 - **マントル遷移層**(深さ約410〜660km):圧力が高くなって、鉱物の原子の並び方が変わる。青い鉱物「リングウッダイト」は結晶の中に水をたくわえられ、この層には海に匹敵する量の水があるかもしれない。 - **下部マントル**(深さ約660〜2,891km):主役は、地球でいちばん多い鉱物「ブリッジマナイト」。底のほうでは、さらに別の鉱物「ポストペロフスカイト」に変わる(2004年、日本の研究チームが実験で発見)。 #### 外核:地球の磁場をつくる、液体の鉄 深さ約2,891kmで、岩の世界は終わる。その下は、とけた鉄とニッケルの海だ。この液体の鉄がうず巻いて流れると電流が生まれ、その電流が地球の磁場をつくる。方位磁針が北を指すのも、オーロラが極地に出るのも、外核のおかげだ。 #### 内核:固い鉄の球 液体の外核の中心には、半径約1,220km、月の7割ほどの大きさの固い鉄の球がある。太陽の表面と同じくらい熱いのに、すさまじい圧力のせいで固体のままだ。外核の鉄が少しずつ固まり、内核は今も大きくなっている。 #### 見えない層は、どうやって見つかったのか 地球の中を直接見た人はいない。層の境目は、どれも地震の揺れ(地震波)の伝わり方から見つかった。地震波は、物質が変わる境目で速さや向きが変わるからだ。 | 年 | 発見 | 見つけた人 | | --- | --- | --- | | 1909年 | 地殻とマントルの境目(モホ面) | モホロビチッチ(クロアチアの地震学者) | | 1914年 | 深さ約2,900kmにある核の表面 | グーテンベルク(地震学者) | | 1936年 | 外核の中にある、固い内核 | インゲ・レーマン(デンマークの地震学者) | 地震の揺れのうち、S波(横波)は液体の中を伝わらない。地球の反対側にS波が届かない「影」ができることから、外核が液体だとわかった。 #### 日本の地下はとくべつ 日本列島の下には、南からフィリピン海プレート、東から太平洋プレートが沈みこんでいる。たとえば東京の真下では、深さ20〜30kmほどでフィリピン海プレートに、70〜100kmほどで太平洋プレートにぶつかる。陸のプレートもあわせて、3枚のプレートが重なる世界でもめずらしい場所だ。本編では、この日本の地下から地球の中心を通りぬけ、反対側の南米大陸の地殻まで、層の順番どおりにたどることができる。 参考: [「地殻」は浮いたり沈んだりしている、だと…?(鎌田浩毅・蜷川雅晴、ブルーバックス/現代ビジネス)](https://gendai.media/articles/-/146894) / [Dziewonski & Anderson (1981) Preliminary reference Earth model(PREM)](https://doi.org/10.1016/0031-9201(81)90046-7) / [首都圏の地下のプレート(防災科学技術研究所)](https://www.bosai.go.jp/information/kenkyudogaposter/pdf/06_2024poster.pdf) / [リングウッダイトと地下の水](https://www.wfae.org/2014-03-13/rare-diamond-points-to-mass-quantities-of-water-in-earths-mantle) / [ブリッジマナイト(Scientific American)](https://www.scientificamerican.com/article/earth-s-most-abundant-yet-elusive-mineral-named-after-nobel-prize-winner/) / [ポストペロフスカイトと内核(東京科学大学・廣瀬敬さん)](https://www.titech.ac.jp/public-relations/research/stories/hirose) ### 東京の地下には何がある? 深さ別に見る、足もとの世界(地下鉄からプレートまで) URL: https://chikyu-no-uragawa.com/articles/tokyo-underground/ **答え** 東京の地下には、浅いほうから順に、水道管やガス管(約1m)、下水道(数m)、地下鉄(約10m〜)、ナウマンゾウの化石が出た地層(約22m)、日本一深い地下鉄駅・六本木駅のホーム(42.3m)、黒湯(〜300m)、温泉(1,000〜1,500m)、かたい基盤岩(約2〜3km)があり、さらに深くには、フィリピン海プレート(約20〜30km)と太平洋プレート(約70〜100km)が重なっている。 #### 深さ0〜10m:都市のライフライン - **約1m ガス管・水道管**:道路の下の浅いところには、ガス管や水道管、電線、通信ケーブルがびっしり通っている。道路工事で掘り返されるのはこの層だ。 - **数m 下水道**:東京23区の下水道管をすべてつなぐと約16,000km。東京とシドニーを往復するくらいの長さになる。 - **数m〜 かつての海**:東京駅の丸の内側は、江戸時代のはじめまで「日比谷入江」という海だった。東京の低地の多くは、昔の海や湿地を埋め立てた土地の上にある。 - **約8m 銀座線**:1927年に開業した「東洋初の地下鉄」。道路のすぐ下の浅いところを走る。後からできた路線ほど、深いところを通るようになった。 #### 深さ10〜50m:化石と、深い駅 - **約12m 沖積層**:約1万年前から川や海が運んだ、やわらかい泥や砂の地層。縄文時代に海が内陸まで入りこんでいたころの貝がらが出てくる。 - **約22m ナウマンゾウの化石**:1976年、日本橋浜町の地下約22mで、地下鉄の工事中に見つかった。約12〜15万年前、東京にはゾウが歩いていた。 - **約28m ビルを支える層**:かたい砂利の層(支持層)。高層ビルは、こうした硬い層まで杭を打ちこんで建物を支えている。 - **40m〜 大深度地下**:地下40mより深いところなどは「大深度地下」と呼ばれ、国が認めた公共事業なら、原則として地上の土地の持ち主に補償なしで使える(2001年施行の法律)。 - **42.3m 六本木駅(大江戸線)**:1番線ホームは地下42.3m。東京でいちばん深い地下鉄の駅だ。 - **約50m 東京スカイツリーの杭**:高さ634mのタワーは、地下約50mまで届く壁のような杭で地面に踏んばっている。 となりの埼玉県春日部市では、地下約50mを世界最大級の地下放水路「首都圏外郭放水路」が流れている。巨大な柱が並ぶ水槽は「地下神殿」とも呼ばれる。 #### 深さ50〜3,000m:お湯と、ガスと、かたい岩 - **〜300m 黒湯**:東京の銭湯で人気の黒いお湯。多くは深さ300mより浅い井戸からくむ。黒い色は、大昔の植物が分解してできた成分(フミン酸)によるもの。 - **200〜1,500m 天然ガスとヨウ素**:千葉県を中心とする「南関東ガス田」では、地層の水に天然ガスがとけている。この水にはヨウ素も多く、日本は世界のヨウ素の約3分の1を生産している。 - **1,000〜1,500m 温泉**:地下は深いほど温かい。東京では、深さ1,000mで約25℃、1,500mで約40℃のお湯がわく。火山がなくても温泉が出るのはこのためだ。 - **約2〜3km 基盤岩**:やわらかい地層の下から、もっと古くてかたい「基盤岩」が現れる。 #### 深さ3km〜:プレートが重なる場所 - **5〜20km 内陸の地震**:日本の内陸で起きる地震の多くは、この深さの地殻の中で起きる。 - **約20〜30km フィリピン海プレート**:南から沈みこんできたプレート。首都直下地震が心配されている場所のひとつだ。 - **約70〜100km 太平洋プレート**:東から沈みこんできたプレート。東京の地下には、陸のプレートもあわせて3枚のプレートが重なっている。世界でもめずらしい場所だ。 - **約680km 深発地震**:2015年5月30日、小笠原諸島西方沖の深さ約680kmでマグニチュード8.1の地震が起き、全47都道府県で震度1以上を観測した。日本の下に沈んだ太平洋プレートの中で起きた地震だった。 #### さらに下へ この先はマントル、そして地球の中心へと続いていく。本編「地球の裏側まで」では、ここで紹介したものを実際の深さの位置に並べ、地球の中心を通りぬけて反対側のブラジルの町に出るまでをたどることができる。 深さは東京などの代表的な例で、場所によってちがう。 参考: [東京の下水道(東京都)](https://www.opendata.metro.tokyo.lg.jp/gesui/R4/sewerageintokyo2019.pdf) / [ナウマンゾウの化石(浜町)](https://tabi-mag.jp/naumanni-hamacho/) / [東京で最も深い地下鉄駅(乗りものニュース)](https://trafficnews.jp/post/131168) / [東京スカイツリーの杭(大林組)](https://www.obayashi.co.jp/chronicle/technology/c3s1.html) / [首都圏外郭放水路(国土交通省)](https://www.ktr.mlit.go.jp/edogawa/edogawa00402.html) / [黒湯(大田区)](https://www.city.ota.tokyo.jp/sangyo/sento/about_sento.html) / [南関東ガス田とヨウ素(産総研)](https://www.gsj.jp/data/chishitsunews/05_01_10.pdf) / [東京の温泉の深さと温度](https://www.asahi-net.or.jp/~vd5h-cb/bbs/special/sience_of_hotspring/sience_of_hotspring_7-0-1.htm) / [首都圏の地下のプレート(防災科学技術研究所)](https://www.bosai.go.jp/information/kenkyudogaposter/pdf/06_2024poster.pdf) / [2015年の小笠原の深発地震(防災科学技術研究所)](https://www.hinet.bosai.go.jp/topics/w-off-ogasawara150530/) ## 出典(本編) - [ナウマンゾウの化石(浜町)](https://tabi-mag.jp/naumanni-hamacho/) - [東京で最も深い地下鉄駅](https://trafficnews.jp/post/131168) - [東京スカイツリーの杭(大林組)](https://www.obayashi.co.jp/chronicle/technology/c3s1.html) - [首都圏外郭放水路(国土交通省)](https://www.ktr.mlit.go.jp/edogawa/edogawa00402.html) - [土合駅の486段](https://trafficnews.jp/post/122104) - [東京の下水道(東京都)](https://www.opendata.metro.tokyo.lg.jp/gesui/R4/sewerageintokyo2019.pdf) - [南関東ガス田とヨウ素(産総研)](https://www.gsj.jp/data/chishitsunews/05_01_10.pdf) - [黒湯(大田区)](https://www.city.ota.tokyo.jp/sangyo/sento/about_sento.html) - [東京の温泉の深さと温度](https://www.asahi-net.or.jp/~vd5h-cb/bbs/special/sience_of_hotspring/sience_of_hotspring_7-0-1.htm) - [首都圏の地下のプレート(防災科研)](https://www.bosai.go.jp/information/kenkyudogaposter/pdf/06_2024poster.pdf) - [世界一深い根(ギネス世界記録)](https://www.guinnessworldrecords.com/world-records/66407-greatest-root-depth) - [世界の深い洞窟](https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_deepest_caves) - [悪魔の線虫](https://www.livescience.com/14390-deepest-worms-discovered.html) - [Desulforudis audaxviator](https://en.wikipedia.org/wiki/Desulforudis_audaxviator) - 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