地球をつらぬく穴に飛びこんだら、反対側まで何分かかる?
答え 空気抵抗や熱を考えない理想の条件なら、約38分で反対側の地表に着く。地球の中心までは約19分。中心を通りすぎるときがいちばん速く、秒速約9.9km(時速約3万5,700km)になる。
落ちていく速さと時間
穴の中には空気がなく、壁にもぶつからないとする。地球の内部では深さによって重力の強さが変わるので、地震の観測からつくられた地球のモデル(PREM)の重力を使って、このサイトで計算した。
| 深さ | 着くまでの時間 | そのときの速さ |
|---|---|---|
| 12.3km(人類が掘ったいちばん深い穴の底) | 約50秒 | 秒速約0.5km |
| 35km(地殻の底、モホ面) | 約1分24秒 | 秒速約0.8km |
| 660km(下部マントルの入り口) | 約6分 | 秒速約3.6km |
| 2,891km(核とマントルの境界) | 約12分44秒 | 秒速約7.6km |
| 5,150km(内核の入り口) | 約17分 | 秒速約9.6km |
| 6,371km(地球の中心) | 約19分 | 秒速約9.9km |
| 12,742km(反対側の地表) | 約38分 | ほぼ0 |
中心を過ぎると、重力は進む向きと逆に引っぱるので、だんだん遅くなる。行きと同じだけ時間をかけて減速し、反対側の地表でちょうど止まる。そこで誰かにつかまえてもらえなければ、また落ちはじめ、約38分後に日本に戻ってくる。
昔の答えは「42分」だった
この問題は物理の教科書の定番で、昔から「約42分」と答えられてきた。これは、地球の密度がどこでも同じだと仮定したときの答えだ。
ところが実際の地球は、中心にいくほど重い。岩でできたマントルの下には、ずっと密度の高い鉄の核がある。そのため、地面から深さ2,891kmの核の表面までは、重力が弱まるどころか少しずつ強くなり、核の表面では地表の約1.09倍になる。最初から強く引っぱられ続けるぶん速く落ちるので、着くまでの時間は42分より短くなる。
2015年、物理学者のアレクサンダー・クロッツさんは、地震の観測から得られた地球内部の密度を使ってこの問題を計算し直し、答えを「約38分」と発表した(報道では38分11秒)。このサイトの計算でも、ほぼ同じ約38分になる。
おもしろいことに、「重力が地表とずっと同じ強さ」と仮定した簡単な計算のほうが、密度を均一とした計算より本当の答えに近い。重力が9.8m/s²のまま変わらないとすると、中心まで約19分、反対側の地表まで約38分になる。
まっすぐな穴なら、どこへ行っても同じ時間?
中心を通らない、斜めのまっすぐな穴でも、同じように「落ちるだけ」で反対の出口まで行ける。これは「重力トンネル」と呼ばれる。地球の密度が均一なら、穴の長さに関係なく、どの2点を結んでも所要時間は同じ約42分になる。東京から大阪でも、東京からブラジルでも同じ時間、という不思議な結果だ。
実際の地球で計算すると、そうはならない。短いトンネルなら約42分、地球の中心を通る長いトンネルほど短くなり、直径を通ると約38分になる。
本当に飛びこんだら、どうなる?
38分というのは、あくまで理想の条件での話だ。実際には、いくつもの問題がある。
- 空気があると遅くなる:空気の中を落ちる人は、スカイダイビングと同じで、時速200kmほどから速くならない。中心にたどり着くまでに1日以上かかり、反対側の地表までは届かずに、中心のあたりで止まってしまう。
- とても熱い:地下は深いほど熱い。マントルは千数百℃以上、地球の中心は推定5,000〜6,000℃もある。
- すさまじい圧力:中心の圧力は約360万気圧。どんな穴も押しつぶされてしまう。
- 壁にぶつかる:地球は自転しているので、まっすぐ落ちたつもりでも、少しずつ横にずれて穴の壁にぶつかる。北極と南極を結ぶ穴でないかぎり、この問題は避けられない。
人類がこれまでに掘ったいちばん深い穴でも、深さは12,262m。地球の半径の約0.2%にすぎない。地球をつらぬく旅は、いまのところ想像の中でしかできない。